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酸素を取り入れるポイントや注意点

以下、自分にわかりやすい記事の抜粋。


ALS患者さんの人工呼吸を安全に行うための5つのポイント
野中道夫ら       難病と在宅ケア Vol.14 No.12 2009.3 P15-18

筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経筋疾患の患者さんでは、呼吸機能の障害に伴い、人工呼吸器を装着して療養せざるを得ない場合が起こります。
そのような方たちが、少しでも安心して療養生活を送れるように、人工呼吸療法を行うためのポイントを5つ選び分かりやすく解説しています。

1.呼吸についての知識をもつ
呼吸には2つの側面があります。
一つは、酸素を取り込み二酸化炭素を排出することで、肺を構成している肺胞と、毛細血管との間で行われます(内呼吸)。
もう一つは、息を吸ったり吐いたりする、<換気>です(外呼吸)。
ALSなどの疾患では、呼吸筋筋力低下のため十分な<換気>ができないことが、神経筋疾患の呼吸障害(呼吸不全)の主体であり、それを<換気不全>と呼んでいます。
人工呼吸器というものは、この換気不全を治療するための機器なのです。
呼吸不全の評価を行うために、動脈から血液を採り、動脈血中の酸素濃度と二酸化炭素濃度などを測定すします(血液ガスをとる)。
その検査から、呼吸不全の重症度だけではなく、呼吸不全が肺自体が障害されて起こっているものなのか、換気が障害されているものなのか判断できます。
肺自体が障害されている場合は、主に酸素濃度が低下(酸素化不全)しますが、ALSなどの換気不全では、二酸化炭素の上昇が目立ちます。
もちろん、酸素濃度も低下しますが、主体はあくまでも、二酸化炭素の上昇です。

二酸化炭素が異常に蓄積すると<CO2ナルコーシス>を起こします。
CO2ナルコーシスを知るために呼吸について解説します。
私たちは、起きている時も、眠っている時も、無意識に息をしていますが、常に呼吸を続けなさいという指令が出ているからです。
実は、健康な状態では、その指令の元になっているのは、酸素ではなく二酸化炭素なのです。
つまり、二酸化炭素がある濃度以上に上昇するとそれが延髄で感知され、呼吸が苦しいという感覚が生じ、換気が促進されるのです。
一方、ALSなどの換気不全では、二酸化炭素が蓄積した状態が長い間続くので、身体はそれに適応しようとします。


すなわち、二酸化炭素に対するセンサーが麻痺しています。
正常ならば苦しくてたまらないような二酸化炭素濃度でも、呼吸が促進されません。
その代わりに酸素濃度が低いことが、かろうじて換気の維持に働いているのです。
呼吸が苦しくなって救急車を呼んだ時、パルスオキシメーターで測定した酸素飽和度が低いということで、高濃度、高流量の酸素を投与すると、換気を促していた最後の警告指令がなくなるので、呼吸が浅くなり、さらに二酸化炭素濃度が蓄積することで、意識が朦朧となり、場合によっては呼吸が止まってしまいます。これがCO2ナルコーシスです。

したがって、換気不全がある患者さんは、まず蘇生バックマスクなどによる換気補助をしなければならないことを銘記する必要があります。
酸素投与をする場合は酸素を低流量から注意深く与える必要があります。
ただし注意が必要なのは著しい低酸素はそれ自体が生命の危険をもたらすということです。
時に、<神経筋疾患の患者さんでは、酸素は禁忌>といわれますが、それは少し極端で、危険な意見です。
CO2ナルコーシスの危険があるからといって、酸素飽和度が低い状態でそのまま放置することは避けなければなりません。酸素飽和度90%を目標に、換気補助と酸素投与を行うことが大切です。
この点は、残念ながら医療関係者でもきちんと理解していない場合があり、注意が必要です。

2.パルスオキシメーターを正しく使う
呼吸不全の可能性がある方や人工呼吸療法を行っている方は、パルスオキシメーターで酸素の取り込みを随時チェックしています。
これによって動脈血液中に含まれる酸素の量を予測することができます。
血ガスで酸素濃度が60Torr以下を示す状態を呼吸不全と言いますが、パルスオキシメーターの数値<酸素飽和度>では、およそ90%以下にあたります。
この数値は、血液が身体に必要な酸素を供給するのに最低限の値ですので、持続的に90%以下になることは大変危険です。
通常は95%を維持することを目安にします。
ただし、慢性呼吸不全のALS患者さんで、呼吸状態や意識状態が悪くなっている場合は、CO2ナルコーシスの可能性があるので、換気を確保することと、酸素を投与する場合も0.5l/分程度の低流量で開始してください。
酸素飽和度90%を目安にし、無理に95%を確保する必要はありません。
高炭酸ガス血症になっている場合、時に顔面が紅潮し、一見すると顔色が回復したかのように見えることがあります。
血液中の二酸化炭素は一般的には家庭内で測定することはできませんので、医療機関で出来るだけ早く確認する必要があります。
パルスオキシメーターは、指にセンサーを取り付けるだけで、すぐに酸素の取り込みの程度がわかる便利な機器ですが、脈をきちんと感知していないときは正確な値を示しません。
脈をとり、脈拍とパルスオキシメーターが示す脈拍が一致していない場合は、正しく測定できていないのです。

3.導入から維持期までを見据えた計画的な対応を行う
人工呼吸療法を安全に行うためには、自覚症状がはっきりしないごく早期の段階から常時人工呼吸器の補助が必要となる時期までを見据えた計画的な対応が重要です。
現在、人工呼吸療法の選択肢としては、マスクによる非侵襲的人工呼吸(NIV)あるいは気管切開による人工呼吸があります。
特にNIVは、気管切開という侵襲的な処置を伴わず、間欠的な使用が可能なため、導入のハードルが低く、早期からの使用ができます。
ただし、球麻痺症状が強い場合は、使用が難しい場合があったり、気道確保が完全ではないなどの注意点があるので、呼吸機能だけでなく、嚥下機能も含めて、患者さんの状態を十分に評価する必要があります。
補助呼吸がまだ導入されていない、あるいは断続的に使用している様な、早期の段階でも、時には気がつかないうちに呼吸状態が悪化して、CO2ナルコーシスなど問題が起こるので、早い段階からの準備が必要です。
ALS患者さんの場合は、残念ながら現段階のNIVには、気管切開による人工呼吸のように年余にわたる延命効果を期待することはできません。
呼吸障害が進行してマスクによる補助換気が限界になるときが遅かれ早かれ必ず来るので、気管切開による人工呼吸に移行するのか、呼吸補助はNIVまでとして緩和ケアを行うのか意思決定が重要です。も
し、気管切開による人工呼吸器を装着するのであれば、あまり時期を先延ばしにするべきではありません。
気管切開を行っても工夫次第で会話することもできますし、口から食事することも不可能ではありません。

4.早期にNIVを導入する
現在では多くの方がNIVを使用して生活しています。
ただ、一般的には依然として、球麻痺症状の強い患者さんではうまく使用できない場合も多いのが現状です。
また球麻痺があまり強くない場合でも、マスクを装着する呼吸補助に対する恐怖感、苦痛、不快感により長続きしないことが少なくありません。
いかにNIVの成功率と継続率を上げるかということは、バーミンガムで開催されたALS/MND国際シンポジウムでも重要なテーマでした。
筆者らは、その解決策はNIVを非常に早期に導入することだと考えています。
まだ患者さんが呼吸不全の症状を自覚しないごく早期の段階から、鼻で空気を吸い込む力を検査するSNIPや肺活量などの呼吸機能検査や睡眠時の呼吸状態を変化を定期的に検査し、一定の基準に達したら、NIVの導入をお勧めしています。

具体的にはSNIPが55cmH2Oを下回るか、夜間の酸素飽和度モニターで、90%以下の累積時間が全検査時間中一分以上になった場合に、導入を行っており、一般的な導入よりかなり早い時期に導入することになります。早期導入により、NIVを上手に使える患者さんは、間違いなく増えています。
呼吸不全の症状が出現してからNIVを導入する場合は、多かれ少なかれ呼吸苦があるので、そこで空気が吹き出してくるマスクを顔に密着させることは恐怖感が伴い、慎重に導入してもうまく使用できないことが多くあります。また、呼吸状態を改善するためには、ある程度の補助圧が必要で、使用時間も長くなります。
一方で、ごく早期に開始する場合には、NIVの設定圧を高くする必要がなく、患者さんが苦痛に感じない低い圧で開始することができます(吸気圧は8cmH2O時に6cmH2Oから開始)。使用する時間も、短時間からで構いません。なぜ苦しくないのに、マスクをつけなければならないかということを、きちんと説明して理解してもらう必要がありますが、その意図をわかってもらい、患者さんの自主性に任せて使用をを継続していくと、呼吸不全の進行に伴って、自然と使用時間が増え、圧が足りなければ、患者様の方から少し圧を上げた方が楽になると言ってくれたりします。早期に導入することで、以前は困難であった球麻痺患者の患者さんでもNIVが成功する例も増えてきています。
NIVは患者様の協力が不可欠ですので、患者様がどれだけ慣れているかということは、安全な療養に大切な要因です。


【呼吸不全患者に高濃度酸素を投与してはいけない】
CO2ナルコーシスは一般に、肺の酸素不足によって生じるが、例外もある。
在宅酸素療法などを行っている場合、呼吸を楽にする目的で不用意に供給酸素濃度を上げると、CO2ナルコーシスを引き起こす。

呼吸中枢は通常、二酸化炭素分圧(CO2分圧)によりコントロールされているが、高いCO2分圧状態が続くと、呼吸中枢がそれに慣れてしまい、CO2分圧ではなく酸素分圧(O2分圧)に応じて呼吸がコントロールされるようになる。
この状態のときに高濃度の酸素を投与すると、低酸素血症は改善するが、O2が充足したと認識した呼吸中枢は呼吸を弱めてしまう。
このため換気機能が低下し、血液中の二酸化炭素濃度が著しく上昇するため、CO2ナルコーシスを引き起こすのである

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| 変性性脊髄症(DM) | 15:11 | comments(0) | trackbacks(0) | TOP↑

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